幸せと
長い長い戦いが、終わろうとしている。出口の見えなかった道で、突如光が自分のことを照らす。
あと10日ほどで、僕は3年住んだ国から、自分の国へと旅立っていく。長かったと言えばそう思うし、ついこの間きたような気もする。最後の年がこんなだったから、きっと複雑な感情を伴っているのではないだろうか。やり切ったと言えばやり切ったし、悔いが残ると言えば、もちろん残っている。でも、清々しさは、ある。
久しぶりに、というか今年初めて、友達とちゃんとした「お出かけ」をした。自然豊かな場所で、綺麗な景色を見ながら友達と過ごす日常は、本当に、ありえないほどの幸せを感じさせた。そしてなぜだか、ここにきて突然、外国語で彼らと話す自分を、いくらかたくましく思えた。誇らしくも思えた。お前はここにきて、ひとりで頑張って生きてたんだぞ、と誰かに言われている気がしたのだ。
人は幸せを感じるとき、必ず誰かがそばにいる。
こんなにありきたりなことは言いたくないのだけど、でも多分、誰よりも自分の言葉として言うことが出来る。僕は今それを、知っている。去年まで、そんなことは思ったことはなかったと思う。僕には誰かが必要で、それを声に出して叫びたいくらいに、強く、深く、感じている。今年は本当に、誰もいなかった。誰とも時間を共有出来なかったんだ。
世界で誰一人として、今年の本当の自分を知らない。
いつかそのことを誇らしく思うことも、また知っている。今はありきたりなことしか言えないけれど、いつかこの事実は、あらゆるものを引き付けて、解き放って、別のものになるんだ。僕はそれを、生きて待ちたいと思う。
たくさんの人が、たくさんの人と時間を共にしているのを見て、ああ、僕はひとりだったんだ、と思った。夕日を浴びながら、そんなことを思った。ありえないほどの幸せと。
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