強い気持ち、強い愛。

空港にいると文章を描きたくなってしまう病は、きっとこれからも変わらないだろうと思う。しかも、ちょっとエモい文章になってしまう病も併発している。


アルゼンチンに向かっている。2年目を迎える為だ。


空港がいつも僕に色々な感情を湧き起こしてくれるのは、第一に、いつも一人だからだ。家族や、友達のグループ、カップルが楽しそうな緊張感を漂わせている中、僕は一人で笑っているわけにもいかないから、真顔で、いろんなことを感じながら一人歩く。海外に行くときは、いつも一人だ。いや、別に一人がいいわけではない。もっと若いときは一人で行動するのが大好きだったけど、今は一人は面白くない。いつからか、急に一人に飽きてしまった。夢はなんですかと聞かれたときは、家族を海外に連れて行くとか、奥さんを海外に連れて行くとか、ビジネスクラスで海外に行くとか、重い荷物を持たずに海外へ行くとか、そういうことを答えてやろうと、空港に来る度に思う。


僕が海外に行くときは、初めて14歳の時にドイツに行った時も、アジアとヨーロッパを回った時も、そしてアルゼンチンに行く時も、いつもリラックスをしていない。怖さとか、緊張とか、憂鬱とか、そういうものが脳みそを支配してしまう。完全な休暇旅行で海外に行く、というのも夢の一つに追加しておこう。


空港で書く文章が エモくなってしまう理由、2つ目。死ぬかもしれないからだ(笑)14歳の時に飛行機に乗った時は、そんなこと一切考えなかったし、そのあと旅をした時もそうだ。飛行機に乗るたびに「死」の可能性を考えるようになったのはアルゼンチンに来るようになってからで、正直、死を覚悟しながらの長旅は、しんどい(笑)最後に笑をつけているのは、これが遺言にならないように、だ。


なぜ前は思わなかったのに、今は思うのだろうか。別に高所恐怖症ではないし、ジェットコースターにも乗るし、バンジージャンプもする。車に乗るのももちろん怖くないし、死ぬことを考えるのは、飛行機に乗るときくらいだ。なぜなんだろう。急に意識するようになったのは。


やり残していることがたくさんあるから今は死ねないという思いがあるから、というのは答えの一つなのかもしれない。これからが人生だと、これから両親に恩返しが出来るのだと、やっと思えてきた今(遅いの?)、死んでしまったら僕は何も残せなくなってしまう。飛行機は連絡が取れないから、最後の最後に恥ずかしさを取っ払って、誰かに感謝をする時間が与えられないから余計に嫌なのかもしれない。


ニュージーランドにいる。10時間のトランジットだ。飛行機の中で観た日本映画のことを考えてみる。高校時代の友人がガンで1ヶ月後に亡くなってしまうことをきっかけに、連絡をとっていなかった当時の仲良しグループのメンバーを、一人一人探し求めていく。20年以上も会っていなかった彼女たちは、それぞれが何かしらの闇を持ち、既に全く違う人生を歩んでいる。そして最後に………踊るのだ。


「強い気持ち、強い愛」


小沢健二という人の歌らしい。僕は全然知らなかったけど、この言葉はいいなあと、そう思った。シンプルだけど、リズムがいい。あと、死を覚悟して飛行機に乗っている僕にはグッと来るものがある。この映画は大コケしたみたいだけど、死を覚悟して飛行機に乗っている人限定公開にした方が良いと思う。陸地で、平常心で観るのは、正直あまりオススメしないけれど。


長い待ち時間も後少し、2時間以上のWi-Fiを購入しなければ、後少しでインターネットは途切れてしまう。でも次に乗る飛行機はどうやらWi-Fi搭載らしい。もし本当にそうだったら、気持ちが少し楽になるのかもしれない。死を覚悟してしまう僕にとって、何かが起きた時に感謝の連絡をすることが出来るか出来ないかは、"死活問題"だから。


さっきニュージーランドに着いた時に、空港で待つ外国人の彼氏に走って抱きつきにいった日本人の女の子は、多分Wi-Fiを1000円で買うか買わないかなんて、悩むこともないんだろう。ああ、結局人生は人のもので、テクノロジーのものではないのだ。


「強い気持ち、強い愛」なのだ。

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