空港に向かうタクシー

約9ヶ月半前アルゼンチンについた僕は、空港から街へ向かうタクシーの車内で、運転手の言っていることが何一つ理解できなかった。今日、街から空港に向かうタクシーの車内で、僕は運転手とみっちりお話をした。


「成長とは、空港で感じるものである」と言ったのは、あのかの有名な、僕だ。


同じ空港でも、来るたびに違う景色を見る。それは日本の空港も、世界各地の空港も、アルゼンチンも同じだった。同じなのに、違うのだ。


またなんとも説明しづらい感情を伴っているのが今の僕で、頭おかしいかもしれないけれど、一番強く思っているのは「死にたくない」ということだ。タクシーの中でも、死にたくないと思った。いくらスペイン語が話せるようになっても、気のいい運ちゃんが高速道路で事故を起こしたら、僕は死ぬことができる。でも、絶対に嫌だなと思った。僕は今、生きたいのだ。


飛行機は、落ちたら死ぬ。そんなことみんなわかっているのに、人間はこぞって飛行機に乗る。僕もそのうちの一人だ。飛行機には何回乗ったかわからないけど、離陸の前、少し怖い。それは、飛行機そのものの怖さよりも、僕の人生を託している感というか、今何が起きても自分には何もできないという状況が、僕をほんの少しの恐怖に陥れるのかもしれない。


今も、少し怖い。


こんなに幸せでいいのか?と思っているからかもしれない。いろんな人に、本当に多くの人に支えられてアルゼンチンに来ることが出来た。無理だと言われたことも、すべて達成することが出来た。そしてなおかつ、健康で、家族がいて、友達がいて、彼女がいて、そしてこれから憧れの街NYに向かう。それが終われば、日本に帰ることが出来る。日本は、また違う空港が待っているだろう。同じなのに、違う空港が。


本当に、あっという間に時が過ぎた。本当に。


僕が今この世からいなくなることはないけど、一応、ここに書いておきたいことがある。未来の自分は、この文章を必ず見返すから。


お前は今、人生で感じたことのない何かを感じ、これまで得たことのない感触を得ている。多分お前は、やると思う。近い将来、すべてのことが繋がって、本当にすごいことをやってのけると思う。そして、もしもその時、生きる意味を問い直したくなったら、空港に来い。とにかく空港に来い。そこには必ず違う景色の空港が待っていて、人生を振り返る時間をくれるから。行きたいところに行ったらいいよ。どこに行っても、誰かが助けてくれる。その時のために、お前は人を助けるんだよ。


さて、そろそろチェックインの時間だ。
何から何まで、無事にいくことを願っている。


良い旅を。




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